市民新報コラム

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個人識別(2002年4月)

 最近は物騒な世の中になり、昨年来、ニューヨークの世界貿易センタービルの倒壊や
大規模災害(事故)も増えています。歯科医師の行う業務に個人識別(身元確認)があります。近年、DNA鑑定が親子鑑定(実子かどうか調べる鑑定)などに使われていますが、これは非常に時間と経費がかかります。不幸にも大規模災害や航空機事故において犠牲者の方が多数であったり、ご遺体の損傷の大きい場合、早急にかつ正確に身元確認をするためには「歯型」が決め手となります。歯は親知らずまで含めて32本ありますが、同じ歯型や治療痕の方はいません。具体的には歯科医院に保存されているカルテやレントゲン写真などが参照のための資料となります。実際、群馬県の尾巣鷹山の日航機墜落事故では数ヶ月に渡り、大学の法歯学教室や歯科医師会の先生方が個人識別を行い、ご遺体をご家族の元にお返しすることができました。また、昨年のニューヨークのビル倒壊においても、私の元で勤務医をしていた先生が被災者の主治医であり、資料をアメリカに送り、身元確認することができました。私自身、法医学教室に在籍していますが、法医学は司法解剖を通じて、その死因や事件性を追求しますが、法歯学は個人識別が中心となります。
法歯学(法医歯科学)教室は全国でも3歯科大学しか設置されていないため、その先生方は異状死体(事件性の高い遺体)の個人識別も行っています。
また、北欧では入れ歯にID・製作番号が入るようになっています。個人識別という観点からもまた、ご高齢の方が介護施設での入れ歯の紛失を防ぐ点からも有効であると思います。しかしながら、日本ではまだ実施されていません。
 大規模災害(事故)という不幸に遭遇しないまでも、治療や口腔内管理ということも含めて主治医を決めておくことが必要です。歯は人が「食べる」ということで「生きていくための証」であり、また、「歯はその人自身の証」でもあることをご理解ください。

 

(文責 医学博士  簗瀬 武史)

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