市民新報コラム
謹賀新年 (2007年1月)
新年、あけましておめでとうございます。読者の皆様におかれましては、穏やかな新春をお過ごしのことでしょう。昨年来、政治改革もあり、行政は国民にとってより開かれたシステムとなりつつあります。しかし、医療制度改革においては、自己負担の増額や医療費抑制の方向性が示され、医療に携わる者にとっては、必ずしも明るい未来ではありません。
また、格差社会が形成されつつあるとの指摘がありますが、歯科医療においても格差医療が形成されつつあります。この数十年来かわらないコンセプトの下での歯科保険医療は、現在の患者さんのニーズに決して適合したものではありません。
例えば、患者さんにとって入れ歯は、「咀嚼(そしゃく)」というヒトの第1番目の消化器官であり、また「話す」という人間本来のコミュニケーションの道具であり、明眸皓歯という言葉もあるように審美的にも重要なものです。顎の土手が痩せてしまった患者さんの入れ歯作りは、歯科医師・歯科技工士とも苦労します。入れ歯の裏側に特殊なシリコンを貼ったり、インプラント(人工歯根)を補助的な維持力として利用しなければ、患者さんのニーズに応えられないような症例もあります。
しかしながら、このような特殊な治療は、健康保険外の治療となってしまいます。また、下顎の位置がずれていることや歯並びが理想的でないことが原因の顎関節症の患者さんの治療において、完治させるためには、正確な仮歯を製作した上での咬み合わせの改善や歯列矯正治療が必要な場合がありますが、やはり健康保険外治療となってしまいます。
虫歯や歯周病は、患者さん御自身の管理で予防や改善が認められる生活習慣病の側面もありますが、不定愁訴を伴うような顎関節症は、やはり疾病として考えるべきです。臨床医はそのジレンマの中で日常診療を行っていますが、逆転の発想をすれば、不十分なシステムであるからこそ、医療人の創意工夫と誠意が求められているのかもしれません。
(文責:(社)日本口腔インプラント学会 指導医 / 医学博士 簗瀬武史)
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