市民新報コラム

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口腔ケア (2004年1月)

最近、「口腔ケア」という言葉を耳にする機会も多いと思いますが、まだ、社会的認知されているとは言い難いです。
口腔ケアには狭義ではお口の中のブラッシングのことを、広義には高齢者や身障者の方の口腔内の健康を保つとの二つの意義があります。御高齢の方は肺炎をこじらせてお亡くなりになる方も多いです。その時、周囲の方は風邪をこじらせてしまい、残念だと悲しまれる方が大半です。
しかしながら、御高齢の方の肺炎の約70%は誤嚥性肺炎で風邪をこじらせたわけではありません。御高齢の方がお正月に喉にお餅をつまらせるケースがありますが、人は年をとると、呼吸する気道と食べ物が通る食道と分別する反射が鈍くなってしまいます。それで、お餅をつまらせたり、また、逆にむせたりしてしまいます。口腔内の清掃がうまくいっていなかったり、また、不潔な入れ歯を入れていたりすると、就寝中に唾液と共にカンジタ菌などの雑菌が唾液と共に肺に流れ込み、それが原因で肺が感染し、肺炎を起こしてしまいます。

また、統計によると肺炎で高齢者の方が入院すると平均約170万円の医療費が必要になります。それと同時に看病する御家族の時間、精神的負担は甚大です。お口のケア(管理)をするだけで、それを未然に防ぐことができます。また、虫歯を治し、入れ歯をきちんと製作することにより、おいしい食事もとれ、人とのコミュニケーションもとれ、肉体的・精神的な回復も期待でき、御家族の御負担も軽減することができます。また、歯周病を改善することにより、産生されるサイトカインを減少することにより脳血栓や心筋梗塞の発生率を減らすこともできます。しかし、介護をされる方たちへの啓蒙が少ないため、口腔ケアが高齢者介護のシステムに十分に取り入れられていないことが残念です。

 

(文責 医学博士 簗瀬武史)

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