患者さんは、インプラント治療がすべて一日で終わることを希望され、我々もなるべく早い時期に治療が終了することを目標にしています。近年、一日でインプラント治療が終了する術式もありますが、しかし、すべての症例に適応しているわけではありません。インプラント埋入施術時、インプラントの骨内安定性は患者さんの骨の形態、骨量、骨質によって、またインプラント体の長さや直径、形状、表面性状、埋入本数によっても異なっており、治療日数が長くなったりします。
一般的には、インプラント埋入後、対合歯噛み合わないように仮歯を作製し、4~6週間後に上部構造(かぶせ物)作製していきます。従って、6~8週間後に上部構造を装着します。特に前歯の場合、見た目が悪いのは困り者ですから、審美性を考慮して、インプラントを埋入施術時にはインプラント体や隣の歯歯を利用して、ご帰宅していただきます。
近年ではインプラント体の改良により、骨と直接、強固な結合を獲得できるようになり、インプラント体単体でかぶせ物を装着できるようになりました。インプラント体と骨が直接接着する術式に変わった直後はインプラント埋入施術後、上顎で半年、下顎で3ヶ月待ってから上部構造を製作していましたが、現在では即時荷重をインプラントに行う場合もあります。しかしながら、前述したようにさまざまな要因に左右され、100%の成功率ではありませんし、骨と結合しない場合もあります。また、骨量が不足して骨造成のために骨補填剤を使用する場合、例えば、上顎臼歯部の骨が足りない時、上顎洞内に骨を造成してインプラント体を埋入する術式はかぶせ物を装着するまで4~6ヶ月待たなければいけません。また、即時荷重したインプラントは症例によっては感染を起こしやすくなります。
なるべく早く治療を終了したいとの患者さんのご希望に答えることは大切なことですが、予知性の高い術式、治療期間を判断することも大切なことです。
(文責 神奈川歯科大学客員教授 医学博士 簗瀬武史)