市民新報コラム

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有病者と歯科治療 (2007年8月)

高齢者や有病者の方も多く歯科医院に来院されますが、歯医者というと「歯を削るところ」というイメージをもっていらっしゃる方が大半です。

ところが口腔内の病気は虫歯・歯周病などをはじめとして細菌による感染症が大半です。処置も抜歯や歯周病の治療は出血を伴う観血処置です。当然、肉体的・精神的にストレスが加わりますし、術後感染の恐れもあります。

例えば、「心疾患」の方の場合、局部麻酔薬中の血管収縮薬や疼痛・精神的な不安により血圧上昇しますと虚血性心疾患により発作が起きる危険性もありますし、観血処置の後は一時的に菌血症になりますがそれが原因で細菌性心内膜炎を起こす恐れもあります。

「脳梗塞」の方の場合、血を固まりにくくするために抗凝固剤を投与されているため抜歯の前には一時的に服用を中止しないと術後の出血が止まりにくくなります。

また、「脳出血」の既往の方の場合、血圧上昇が原因で再発の恐れもあります。

「高血圧症」「動脈硬化」の方の場合も歯科治療中に心疾患・脳卒中を合併することが多く、術後の感染の確率が非常に高くなります。例えば、抜歯した後、健常者の方よりも治療不全が起こりやすくなりますし、重篤な場合は肺炎を起こすこともあります。

今回はいくつかの病気と歯科治療時のリスクについて述べましたが歯科治療は様々な様態に対処して行えば危険はありません。ただ、「歯を削るところ」と思っていらっしゃる方が歯科医にご自分の状態を伝えず、歯科医が対処のないままに治療が行われた場合には大きなリスクが伴います。

初診時の受診票や歯科医の問診時にはご自分のお体の状態を伝えることをお勧めします。 たかが「歯」されど「歯」です。長寿のためにも。


(医学博士、日本口腔インプラント学会認定医 簗瀬 武史)

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