市民新報コラム

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根尖病巣 (2006年3月)

突然、頬や歯茎が大きく腫れてしまったり、神経を抜いてもらって被せてある歯が、咬むとひどい痛みを感じ、歯科医院に飛び込んで、レントゲンを撮った後、歯科医に「歯根の先に膿が溜まっているので治療が必要です。」と診断された経験もおありかと思います。
また、痛みがない歯でも同様に治療の必要性を指摘される場合があります。

患者さんの立場からすれば痛くもない歯を治療されることに抵抗感を覚えることもあるかと思いますが、根尖病巣は慢性的に自覚症状を伴わないで大きく進行していくため、早期に治療したほうが治療効果もあがり、再発を防ぐことができます。大きな病巣や膿が袋状になっている場合は、歯内療法(歯根の管を通じての治療)では限界があるため、歯槽骨に穴をあけて病巣を取り除く口腔外科小手術にて治さなければいけません。

根尖病巣は再発もしやすいため、歯内療法では、痛みや、歯肉の腫れ、歯の外観を注意深く観察し、さらにX線写真による診査、感染の状態を知る為の診査など、必要と思われる事柄を全て調べます。その結果をもとに病状の原因となる歯の根の中心を通る細い管“根管”の処置を行います。根管は直経1mm以下と非常に細く、しかも硬くなった部分や、わん曲しているものがあります。根管治療ではこれら根管に対して、小さな器具を完全に通過させ清掃し、形態を整える非常に高度な作業が行われます。

質の高い治療を提供するためのトレーニングと、高度な技術が必要であることがおわかりいただけると思います。根管の治療が不完全であったり、新たな感染や損傷が起こった場合は、再治療が必要となります。結果として「歯を残す」ということが、いかに大切であるか、そして、健康であることの大切さを一本の歯が教えてくれると思います。

治療は歯を保存するために、無くてはならない基礎工事で、つまりは、ビルの基礎工事のようなものです。ですからこの処置は重要で、歯の予後に大きく関わってきます。

 

(文責:医学博士/(社)日本口腔インプラント学会 指導医 簗瀬武史)

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