「週間文春」の歯科特集で特定の4社のインプラント(人工歯根)以外の臨床的な予後における確実性やインプラント医の信頼性について疑問視するような記事がありましたが、私は記事内容について多少の反論を持ちます。
以前のインプラントは人工サファイア製や形状記憶合金製もありましたが、現在はチタン製やチタン表面にアパタイトをコーティングした材質の2種類に大別されます。現在、チタンを素材にすることは世界の主流となっており、チタンは整形外科の分野でも使用されております。 現在、日本でも20数種類の歯科インプラントが一般的な臨床で使用されています。各メーカーにより、チタンの表面の処理の仕方が異なるため、骨と生着する期間は1カ月半から6ケ月と異なりますが、骨と生着してしまえば、ほとんど差異はありません。ただし、それぞれのインプラントに利点・欠点はありますから、症例により私の場合は数種類のインプラントを使い分けしています。厚生労働省の医療器具としてのインプラントの認可もチタン製であれば、以前よりも緩やかな規定になってきています。
私はどのインプラントを患者さんに使用するかではなく、各インプラントの特性を理解した上で歯科医が施術方法・施術環境を重視することや咬み合わせ、残存歯の状況を考慮してかぶせ物を行なうことが大切であると思います。
インプラント医のモラルについても言及してありましたが、現在、日本口腔インプラント学会は4700人の歯科医が会員であり、認定医・指導医制度もあります。厚生労働省認可社団法人日本歯科先端技術研究所(会員700人)や埼玉県には埼玉インプラント研究会もあります。これらの会員は臨床研究において切磋琢磨していますが、アメリカやスウェーデンなどの先進国と異なり、日本では一部の心無いインプラント医のためにインプラントは不当に高額な医療で危険であるという風評が未だ存在するのは悲しいことです。
(文責 医学博士 簗瀬 武史)