先月に引き続き、超高齢社会における厚生労働省の「認知症」への対応瀬策である新オレンジプランの解説をします。
認知症は超高齢社会では多くの人が罹患し、社会全体で対応しなければなりません。認知症はすべての人に出現する物忘れなどの中核症状と同時に個人差や進行状態、病状により妄想・うつ・徘徊等の行動・心理症状(BPSD)や身体合併症が出現します。怒りっぽくなったり、ふさぎ込んだり、時には暴力を振るったり、万引きをしてしまったりなどの行動があります。
このような症状への対応を間違えたり、その対応が固定化しているとさらに症状が進行していきます。そのためには医療機関や介護機関だけでなく、社会のやさしい対応が必要なのです。
先日、認知症の患者さんが踏み切りで鉄道を止めてしまい、裁判所がその方の年老いた奥様に監督責任ありとして賠償命令を出しましたが、認知症への対応を社会全体で背負うという目標に逆行する判決であり、閉ざされた社会観しか持たない無知としか言いようがありません。
新オレンジプランでは認知症への理解を学校教育で行うことや、一般の方々へ研修を行い、認知症サポーターを養成することも目標になっています。朝霞地区では医師会だけでなく、薬剤師会、歯科医師会も対応を始めています。軽度認知機能障害や認知症の方、また独居されている方はご自身の服薬すらお忘れになったり、処方されたお薬を服用する必要性を理解できない方もいます。その方々のためにお薬手帳や服薬シールの発行を行っています。
また、歯科医師会は事務局に常駐の歯科衛生士を待機させ、高齢者の方の診療相談、個別の表門診療への相談、対応を行っています。春一番も吹き、花冷えをするような朝もなくなり、やさしい陽差しになってきました。まずは、皆様の主治医の歯科医院を訪れて、定期健診を受診して、歯周病と虫歯のチェックをしてください。認知症を含む万病の予防はまず、お口の健康からです。
(文責 神奈川歯科大学客員教授 医学博士 簗瀬 武史)