高齢者の方にとって「咬む」「食べる」「話す」「笑う」ことは大変、重要ですが、その役割をはたす「入れ歯」が合わなくてお悩みの方も非常に多いと思います。
また、入れ歯で何でも食べられる人もいるのに自分はなぜ？という思いの方も多いでしょう。健康保険の入れ歯で不自由を感じない方もいれば、自由診療で特殊な作り方をしなければいけない方もいらっしゃいます。
入れ歯の場合は、残存している歯の状態や顎の骨がどれだけ残っているかが、入れ歯のつくりやすさを左右します。歯茎の骨が残っていれば、大きく覆うことができますから、安定のいい入れ歯を作ることができますが、重度の歯周病で骨が痩せて抜歯した場合や合わない入れ歯を長年使って、骨が痩せて歯肉がブヨブヨになった場合はちょっとやっかいです。
また、口腔内乾燥症で、唾液の量が少なくなると、入れ歯と粘膜の潤滑油が減るわけですから、歯肉がこすれて痛みがでやすくなります。また、部分入れ歯の場合は、どの歯を抜いてどの歯を残すかが、またどの歯に入れ歯を維持するためのバネを掛けるかが、考え処ですが、あまりグラグラの歯や位置がずれてしまった歯を少数残して、部分入れ歯にすると逆に咬み合せや見た目が悪くなったり、入れ歯がガタガタする場合もあります。むしろ、総入れ歯の方が安定する場合もあります。
そこで抜歯の見極めも重要になります。ですから、入れ歯をお作りになるときは事前に御自分のお口の中の状況を歯科医から聞いて、どのような方法・設計で作ってもらえるか理解しておくと入れ歯への不安、不満も軽減すると思いますし、希望も持てると思います。入れ歯はカンジタ菌などが繁殖しやすいため、不潔な入れ歯を入れっぱなしにしていると嚥下性肺炎の原因になりますので、1日1回はきれいに清掃してください。また、新しい入れ歯は靴擦れと同じようにどこかが痛くなります。あきらめずに、歯科医院で必ず調整をしてもらってください。
追記：
部分入れ歯の場合は、以外と「入れ歯がなくても食べれるから」という理由でお使いにならない方もいらっしゃいますが、入れ歯の役目は噛み合わせを維持する大事な役目もあります。残っている歯の負担を軽減したり、歯の位置がずれたりするのを防ぐ役目もありますから、なるべくお使いになった方が賢明です。部分入れ歯を作る時、どの歯を抜いてどの歯を残すかが悩み所ですが、あまりグラグラの歯や位置がずれてしまった歯を残すと、逆に入れ歯の維持に支障がでる場合もあります。
（文責 医学博士 簗瀬武史）
