平成23年度の日本人喫煙率は男性35.2%、女性13.5%と年々、減少傾向にはあります。
たばこの中には化学物質4000種類、有害物質200種類、発がん物質60種類が含まれています。特に多いのはニコチン、タール、一酸化炭素、シアンがあります。
ニコチンタバコ煙に含まれる精神作用物質、毒物で口腔粘膜、唾液を介して胃粘膜から吸収し、血液中にて各臓器に運搬されます。吸収されたニコチンは体の中で代謝され、発がん物質が生成されます。
タールは多くの発癌物質、発癌促進物質、有害物質を含みます。禁煙後も長期にわたって肺の中に残存し、悪影響を及ぼします。一酸化炭素は血液の酸素運搬機能を低下させて、末梢の慢性的な酸欠を引き起こします。シアン化水素(HCN)はいわゆる青酸ガス 酸化酵素の働きを阻害し組織呼吸の障害を起こします。
また、循環器疾患は動脈硬化をベースに起こります。たばこは動脈硬化を促進します。動脈硬化はお年寄りの病気と思っている方がいますが、実際、10代でも動脈硬化が見つかります。若い時から喫煙すると当然、動脈硬化が進むことになります。特に喫煙が起因といわれるのが口腔癌です。口腔癌は全悪性腫瘍の中の1~5%程度ですが、最大の危険因子は喫煙とされています。口腔癌の85%は扁平上皮癌ですが、白板症や紅板症のような前癌病変や扁平苔癬といった前癌状態が存在します。
また、喫煙者は歯周病に罹患しやすく、喫煙は歯周組織を破壊します。喫煙者は非喫煙者に比べ2~8倍で歯周病にかかりやすく、経時的にも歯周炎がより進行していく。特に喫煙に起因した喫煙関連歯周炎の治癒には禁煙が必須となります。インプラント治療の予後にも影響を及ぼし、喫煙者は非喫煙者に比べると成功率は低くなります。
現在は副流煙による受動喫煙も問題提起されています。昔、たばこは男らしさの象徴でしたが、現在はご自分の健康はご自分で守る時代なのです。
(文責 日本口腔インプラント学会 理事・指導医 医学博士 簗瀬 武史)