新型コロナウィルスのパンデミックをワクチンによってコントロールできるようになり、予断は許されないものの社会状況も回復傾向にあり、日常生活を取り戻しつつあります。
ところが今度は「サル痘」の感染者が世界中で散見されるようになりました。今月号は厚生労働省のホームページを利用させていただき、情報をまとめて簡潔にお知らせします。
サル痘ウイルスによる急性発疹性疾患であり、1970年にザイールでヒトでの初めの感染が確認されました。日本では今までサル痘患者の報告はありません。中央アフリカから西アフリカにかけて流行していますが、2022年5月以降、サル痘流行国への海外渡航歴のないサル痘患者が欧州、北米等で報告されています。アフリカに生息するリスなどの齧歯類をはじめ、サルやウサギなどウイルスを保有する動物との接触によりヒトに感染し、また、感染した人や動物の血液・体液・皮膚の病変、血液との接触(性的接触を含む。)、近接した対面での飛沫、患者が使用した寝具等との接触等により感染します。渡航歴のない患者の出現はヒトからヒトへの感染が拡大していると言えます。
6日~13日の潜伏期を経て発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状が出現して皮疹は顔面や四肢に多く出現し、徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮となります。
多くの場合は自然軽快しますが、小児例や、あるいは曝露の程度、患者の健康状態、合併症などにより重症化したり、皮膚の二次感染、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜炎などの合併症を起こすことがあります。天然痘ワクチンによって発症予防効果があるとされていますが、治療は対症療法になります。致死率は数%-10%程度と報告されていますが、2003年の米国での集団発生時には死亡例はありませんでした。サル痘は2次感染率が低く、また日本は検疫体制がしっかりしているので流行することはないと推察します。(出典:厚生労働省HP)
(文責:神奈川歯科大学客員教授 簗瀬 武史)