市民新報コラム

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糖尿病と歯周病 (2013年9月)

現在、歯周医学(ペリオドンタルメディスン)が進歩して歯周病が全身の健康に関係していることが明らかになってきました。歯周病が関係する症候群には糖尿病、冠状動脈心疾患、肥満、早期低体重児出産、誤嚥性肺炎、骨そしょう症などが報告されています。特に糖尿病と歯周病は病気同士が相互関係を持っています。

糖尿病はインスリン作用の不足により慢性の高血糖状態が起きる代謝性疾患です。自覚症状が軽度ですと、放置されることも多く、細い血管に異常が起きたり、脳卒中や心筋梗塞なども起こりやすくなります。糖尿病に罹患していると細い血管などの微小循環障害がおこり、傷が治りにくくなり、歯周病関連菌の感染に対する抵抗力が低下するために、歯周病がなかなか改善しません。また、血糖値が上昇するために、歯周組織のコラーゲンの代謝能力や歯根膜の細胞にも異常が起きるため、組織の修復機能が低下してしまいます。

お互いに密接に関与して、それぞれの病気を悪化させますから、逆に歯周病の改善が糖尿病の改善にもつながります。肥満を伴う糖尿病の患者さんは脂肪細胞から「TNF-α」が作られ、血液の中で濃度が濃くなるとインスリンの抵抗性が高まり、インスリンの効きが悪くなってしまいます。歯周病の患者さんは歯周病原菌の一つであるグラム陰性桿菌から「TNF-α」が作られ、歯を支える骨を溶かしていきます。また、同時に歯周病が「TNF-α」の血液の濃度を高めて、太った糖尿病の患者さんと同じ状態にしてしまいます。この結果、歯周病により糖尿病はさらに悪化してしまいますが、歯周病の治療を行い、改善されると「TNF-α」は軽減しますから、糖尿病のコントロールをすることができます。

糖尿病の患者さんの治療はその重症度により若干異なりますが、まずは歯石の除去を行い、日々のブラッシングの重要性を理解し実践すること、3か月に1回の定期検診とメンテナンスを行うことによりかなりの効果を得ることができます。

(文責:神奈川歯科大学客員教授 医学博士 簗瀬武史)

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