新型コロナウィルスの第1波は終息の方向にあります。もちろん、人の往来、経済活動の再開や心の緩みが第2波を惹起させる危険を認識しなければなりません。2019年に最初の感染者の発見で命名されたCOVID-19ですから中国が早く感染者の公表や感染源への対処を行っていれば、このようなパンデミック(世界的な大流行)を防ぐことができたのではないかと悔やまれます。
フランスの人口学者エマニュエル・トッドは「コロナの世界的大流行はグローバリズムの知的敗北」であると言っています。世界がボーダレスになり、共通の経済環境や価値観を持つことが世界の活性化や平和に繋がる「善」との考え方ですが、結局は欧米の価値観の世界への押しつけであったのかもしれません。
新型コロナウィルスによる死者数は必ずしも先進国、後進国という色分けにはなっていませんし、アメリカでもニューヨーク州は多いですが、テキサス州やカリフォルニア州では非常に少ない数字です。また、民主主義や権威主義、独裁主義という一見、寛容な主義と悪というような主義で死者数も色分けができません。中国系はじめ移民に対して寛容であった地域は多くの死者が発生しています。また、GDP(国内総生産)、一般的にはその国の経済力や国力を示す数字ですが、一見、豊かな国が死者数が少ないわけではありません。
フランスは観光、農業、軍需産業立国ですが、GDPの数字の表むきだけにこだわりマスク工場、人工呼吸器工場が全くないために医療対応が遅れました。中国が安いからと生産を依存し、サプライチェーンが途絶え、わが国でも様々な製品が操業停止に追い込まれましたが、フランスでは多くの人々の命も奪われたわけです。今回、第1波を世界に注目される被害で押さえたのは国民へロックダウンなどの法的拘束がなくとも外出や経済的な損失を抱えながら自粛をする「行動規範」を持ち、耐え抜いた「日本の国民性」であると思います。
(文責:神奈川歯科大学 客員教授 医学博士 簗瀬武史)