皆さんは何のために歯を磨きますか。顔を洗うのと同じく清涼のため、または口臭予防のため、歯周病予防のため、様々な効果があるといえますが、今回は虫歯予防の観点からお話したいと思います。
虫歯は世界中で最も多くの人が持っている病気の一つといえます。その予防のため、セルフケアとして重要なことは適切な方法でフッ化物配合歯磨剤を使用することです。多くの方は歯磨きの際に歯磨剤を使用していると思います。2010年頃までは歯ブラシと比べて歯磨剤は脇役のように考えられていましたが、昨今では虫歯予防の観点ではフッ化物配合歯磨剤の応用はブラッシングテクニックよりも重要視されています。適切な方法でフッ化物配合歯磨剤を応用することで虫歯予防になるというデータがでているのです。
その虫歯予防メカニズムは、歯磨き後に口腔内に保持されたフッ化物イオンによる再石灰化の促進、エナメル質の結晶性の改善、細菌・酵素作用の抑制効果であるといわれています。日本国内で売られている歯磨剤にはほとんどのものにフッ化物が配合されていますが、そのフッ化物イオン濃度は欧米諸国に比べ低く、上限は1000ppmでした。昨年3月に厚生労働省により歯磨剤のフッ化物イオン濃度の上限は1500ppmに認められ、やっと国際的な基準に追いついたところです。1000ppm以上では500ppm高くなるごとに6%の虫歯予防効果の上昇がみられるといわれています。現在、医薬部外品として売られているフッ化物配合歯磨剤には1000ppm以下のものには濃度記載義務がありませんが、1000ppm以上のものにはフッ化物イオン濃度の記載と6歳以下の小児が使用しないことを記載することが義務づけられています。
予防を効果的に、安全に行うためには年齢に応じたフッ化物濃度の歯磨剤を選ぶこと、年齢に応じて適切な量を使用すること、適切な方法で使用することが大切です。成人の場合は1日2回、2cmつけて2分間、磨いた後は2時間飲食を控えることが推奨されています。
(文責 ヤナセ歯科医院 歯科医師 片岡英里)