市民新報コラム

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災害と歯科支援(2018年10月)

西日本豪雨災害、大阪北部地震、台風21号、北海道胆振東部地震において犠牲になられた方々に哀悼の意を表し、被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申しあげます。

日本は四季があり緑に包まれた美しい国ですが、その反面、自然災害と人々は対峙しなければならない国です。私も7年前、東日本大地震の際は11日間、宮城県岩沼市、石巻市、東松島市、亘理町、角田市、女川町にて死体検案支援・身元確認作業に従事しました。ご遺体の口腔内所見と生前通院されていた歯科医院に残っているカルテ、レントゲン、口腔内写真との照合を行い、身元を特定します。現代はDNA判定の時代ですが、迅速に身元確認を進めるには未だに法歯学を用いた判定方法は有用です。東日本大震災では16000名の方がお亡くなりになりましたが、約1200体のご遺体は歯科所見により身元確認を行い、ご家族の元にお返しすることができました。

また、大規模災害時に歯科医療関係者にとって大切な仕事は避難所などで暮らされている方の口腔ケアです。自然災害が起きたときはインフラも破壊されてしまいますから、被災された方は悲しみと同時に不安も生じてしまいます。過度のストレスは体調にも大きく影響を及ぼし、免疫力の低下などを引き起こします。不自由な暮らしの中で「歯を磨く」「うがいをする」ことも忘れてしまいます。ご高齢の方や合併症をお持ちの方は免疫力や予備力も低下しているため、感染症に罹患しやすくなり、特にお口の中が不潔になっていると誤嚥性肺炎により命の危険が生じます。混乱時の避難所では水や食糧の配給はあっても口腔ケア用品の支給は行われないのが現状です。最近は防災意識も高まり、皆様のご家庭でも非常時の持ち出し品や食糧をご準備されているかと思います。非常袋の中に洗口剤、歯磨き粉、歯ブラシ、ガムも入れて置くようにお願い申し上げます。「歯や歯茎を拭いて強く水でうがいをする」だけでも有効です。

(文責 聖マリアンナ医科大学法医学講座 非常勤講師 簗瀬武史)

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