「AED」とは「Automated External Defibrillator」の略であり、「自動体外式除細動器」のことです。私の歯科医院でも完備していますが、この器械は患者さんが心停止した時や心室細動が起きた場合に心臓を正常な動きに戻すことができます。この器械自身がその必要性を判断し、必要な処置をしてくれる優秀性を有しています。
通常、心臓はその内部にある洞結節(ペースメーカー)からでる電気的な刺激で一定のリズムで鼓動します。洞結節に病因のある患者さんは人工的なペースメーカーを体内に埋め込んでいる方もいます。
現在、病院外での心停止の発生件数は2万から3万件と推測されています。その心臓の突然死の主な要因に心室細動があります。これは心筋がばらばらに動き始め、心室自体が収縮しなくなり、心臓のポンプとしての機能が失われ、血液を肺や全身に送れなくなる状態です。心室細動発生から1分ごとに救命率は10%ほど下がると言われています。よって、1分でも早く救命処置を行うことが必要となります。
AEDを使用して強い電気ショックを心臓に与えて心筋のけいれんを除去することにより、洞結節が再び働き始め、心臓は動き始めます。このようにAEDは効果的な器械なので、旅客機や公共施設に完備されるようになっています。昨年からは救命のための一般市民の使用も認められました。海外ではAEDを常備している家庭もありますし、日本でも一般向けの販売・レンタルも始まっています。
歯科治療時や局所麻酔時には血圧や脈拍は増加傾向にあり、患者さんの心臓への負担も大きくなります。わが国でも不幸にも年間数件、歯科治療時の偶発症や心停止でお亡くなりになる患者さんもいます。まずは患者さんが歯科医に病歴を正しく伝えることや診察前に体調不良であればお申し出になることで、未然に偶発症を回避することができます。優秀なAEDより「伝える言葉」が転ばぬ先の杖なのです!
(文責 東邦大学客員講師 医学博士 簗瀬武史)