市民新報コラム

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抜歯について(2000年3月)

患者さんからよく「歯医者で歯を抜かれた」とうかがうのですが、その時に私は「抜いてもらったんでしょう」とやんわり言うことにしています。歯根の尖に治療するには不可能な大きさの病巣がある歯を放置しておけば顎骨炎や歯性病巣感染の原因になったり、重度の歯周病の歯をそのままにすれば歯槽骨の吸収が大きくなり義歯を製作しづらくなります。逆に治療をして抜かないようにしようとする場合に「また痛くなるのはいやだから抜いて欲しい」と希望される場合もあります。理由をうかがうと「歯は何本もあるから」という答えが返ってきます。ここで大切なことは、患者さんが歯の役割とご自分の歯の状態を理解されることです。ここの歯は発音・審美性・咀嚼機能のみならず精神的なストレスマネージメントにおいても大きな役割を持っています。また、咬み合わせが悪くなれば、筋肉の過緊張が起こり肩こりや不定愁訴の原因にもなります。抜歯をして歯の数が少なくなれば。残っている歯への負担も増えてしまいます。つまり、残っている歯の本数にかかわらず「抜歯」というのは大切な診療行為だということです。
昨今、インフォームド コンセント(説明を受けた上での同意)の重要性が歯科医療でも認知されています。診療行為によってはメリットとデメリットが存在します。たとえば歯髄(歯の神経)を取るよりは保存したほうがベターです。しかしながら、歯髄が化膿している状態で無理に残せば壊疽(えそ)を起こし、激しい痛みが出ます。抜歯も同じです。抜くよりは抜かないほうがベターです。しかし、状態の悪い歯を無理に保存して、何らかの悪影響が出てしまう場合は別です。つまり、抜歯も含めてご自分の受ける診療行為の説明を聴き、理解されることが重要です。歯科医は患者さんの口腔および全身の健康を目標に診療しています。「~された」とならないためにも。

 

(医学博士、日本口腔インプラント学会認定医 簗瀬 武史)

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