市民新報コラム

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噛むことと認知症 その3 (2014年4月)

今月は「その3」をお伝えします。ヒトは無意識に食事をしていますが、ヒトの「咀嚼システム」は非常に複雑です。ヒトがものを噛んだ瞬間にその刺激が歯根の周囲にあり、歯槽骨との間に介在する歯根膜に伝わります。歯根膜の中には圧受容器がありますから、瞬時のうちに情報が脳に伝えられ、ヒトは硬さや歯ざわりを感じ取り、脳から運動神経を通じて、このくらいの強さで噛みなさいと反射的に筋肉に命令を出します。咀嚼運動は咀嚼筋だけでなく、舌の筋肉、お顔の表情筋や首、肩の筋肉まで使って行われます。その筋肉の連携は非常にすぐれているため、ヒトは舌を噛んだり、頬や唇を噛むこともなく、ものをすりつぶして、スムーズに嚥下できるのです。
センサーで感じ、知覚神経から情報が脳に伝わり、脳から運動神経を通して、それぞれの筋肉に調和の取れた情報命令が行き、それぞれの筋肉が動いてくれるシステムは脳への血流も増え、脳を使い、脳が活性化されます。

また、顎の筋肉にはカラダの他の部位よりも多くの「筋紡錘(きんぼうすい)」が存在します。筋紡錘は筋肉の中にあり、筋肉の伸び具合を感知して、その情報は脳へ伝わり、脳から骨格筋へ命令が伝わり、筋肉の伸びや収縮を一定に保ち、ヒトの姿勢を維持する大切な働きをします。このときに脳に伝わる情報は脳を目覚めさせる部位に刺激します。
ですから、ヒトは姿勢を正している時は眠くなりませんが、ごろっと横になったりしていると自然と眠くなったりするのです。筋紡錘は背中やふくらはぎやお尻の筋肉にも多く存在しますから、背伸びをしたり、姿勢を正すと、眠気も収まります。また、前述したように他の部位より顎の筋肉に多く存在するので、大きくあくびをしたり、ガムを噛むと目が覚めてきます。
楽な姿勢ばかりとらず、軽い運動や正しい姿勢で硬いものをしっかりと十分な回数で噛んでいるだけで、脳は自然と活性化され、認知症を予防することができます。

(文責 神奈川歯科大学客員教授 医学博士 簗瀬武史)

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