市民新報コラム

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歯科治療が嫌われる理由(2000年5月)

「歯医者に治療に行く」という行為に対して大半の方は不快感を持っています。嫌われる第1番目が「歯医者のあの削るときの甲高い音」についてです。我々はタービンといわれる切削器具を使いますが、これは1分間に約30万回転で回ります。原動力はコンプレッサーで圧縮された空気で小さな歯車を回しますが、この時笛を吹くようにあの音が発生してしまします。また歯を削る時に発生する摩擦熱を防ぐために大量の水を噴きかけます。このために「歯」を削る時、特に神経が残っている生活歯を削る時には、患者さんはあの甲高い音としみるような痛み、そして頭にひびくような振動に悩まされてしまうのです。音に関してはヘッドホンにて音楽を聴くことも制御法のひとつですし、しみる場合は、早めに歯科医に伝え、局部麻酔を行ってもらうことにより防げます。近年、アメリカで開発された「エアーアブルージョン」という酸化アルミニウムの粉をふきかけて歯を削る機械もあります。音・振動・痛みがほとんどありませんが、使用できる治療に限りがあることもあり、日本ではまだ臨床の一部にしか取り入れられないのは残念です。
 次は「診療するときの体位」です。野生の動物でおなかを上に向けて寝るものはいません。おなかという命にもかかわる弱点を守るために背中を丸めて眠ります。人も動物です。他人の前で仰向けにされ、口をあけ、非常に無防備な状態で次に来るかもしれぬ痛みに恐怖感・不安感をもってしまうのです。現在は、患者さんに仰向けになっていただく水平位といわれるこの形が診療の基本スタイルです。どうしても不安なら、ひざ掛けをおなかから足元にかければ、多少不安感は和らぎます。
 どうしても現在の技術レベルでは軽減できないこと、ちょっとした歯科医の気遣い・説明や患者さんの理解で軽減することもあると思います。不安や嫌悪感を感じたときは、積極的に質問・要望を言う方が誤解も生じにくいと思います。

(医学博士、日本口腔インプラント学会認定医 簗瀬 武史)

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