市民新報コラム

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口腔内細菌 その2(2017年11月)

先月に続いて今月も口腔内細菌についてお話をします。
先月、歯周病がひどくなると、歯周病原菌が血液の中に入り、血栓を作りやすくなり、血管が詰まり、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなるとご説明しました。認知症はいろいろな原因疾患が起こす病気ですが、その原因疾患に多発性脳梗塞があります。東洋人はご自分でも気づかない不顕性の脳梗塞を起こしやすいのですが、多発的に生じることにより「まだら呆け」つまり認知症を起こしやすくなってしまします。
東京医科歯科大学からバージャー病という難病に関する新たな発表がされました。バージャー病は20代から40代の喫煙者の男子に多い閉塞性血栓血管炎という病気で発症する手足の抹消血管がつまり痛みや皮膚の潰瘍を生じ、末期では手足が腐ってしまうたいへんな病気で日本には約1万人の患者さんがいるといわれています。研究グループがバージャー病の患者さんの患部から取り出した試料に歯周病原菌が見つかり、なおかつ中等度から重度の歯周病患者の方が見つかりました。全てが解明されているわけではありませんが、歯周病とバージャー病になんらかの因果関係があるのは明らかです。
また、妊産婦の方で中等度以上の歯周病に罹患している方は低体重児の出産や早産が歯周病に罹患していない方と比較すると約8倍高くなるとの報告もなされています。日和見感染(ひよりみかんせん)症という病気があります。普通の健康なヒトには感染症を起こさない細菌やウィルスがご高齢の方や悪性腫瘍、免疫不全などで免疫力が低下している方には日和見感染を起こしてしまいます。先月号でも書きましたようにお口の中には日和見菌が存在しています。つまり、口の中が不潔な状態になっていて免疫力が低下している方は日和見感染症を発症し、命を落とす危険があるわけです。
口の中の病気は「むし歯」だけというご認識の方がまだまだ多いですが、歯周病は大切な人生を奪ってしまう病気なのです。

(文責:日本口腔インプラント学会理事 医学博士 簗瀬武史)

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