市民新報コラム

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噛むことと認知症 その2 (2014年2月)

昨年末から「噛むことと認知症」について記述しましたが、東北大学の調査で健常群は平均14.9本の歯が残っているのに対し(ヒトの一般的な天然歯数は28本)、認知症の疑いのある人は9.4本と少なく、歯の数と認知症との関連が明らかになっています。また、広島県での調査では残存歯20本以上の人は寝たきりの方はほとんどいなく、高齢でも仕事をされている方が多く、残存歯9本以下でも入れ歯を使っている方は寝たきりや要介護が少ないけれど、入れ歯を使っていない方は寝たきりや要介護が多いとの結果がでています。

この調査結果は天然歯の喪失に伴い「噛む」を感知する歯根膜の圧受容器を失っても入れ歯を使うことにより少なくとも咀嚼能力は担保され、健全な咀嚼運動は脳へ刺激となっていることを明らかにしています。また、東京都老人総合研究所が65歳-84歳の高齢者を対象に咀嚼能力と全身機能の関係の調査をしましたが、咀嚼能力の高い人は天然歯数が多いだけでなく、骨のカルシウム量が多く、開眼片足立ちのできる時間も長かったとの結果があります。この結果は歯のよい高齢者は充分かつバランスのよい栄養を摂取することができ、日常の生活行動も活発であり肉体的にも適度の負荷をかけることができるため、筋力や平衡感覚の低下も少なく、健康的な日々を送ることができ、精神面でも充実していると言えます。

実際の歯科臨床においても歯の欠損の多い高齢者や精神疾患に罹患している方が入れ歯や歯科治療により咀嚼機能が向上して「噛む」ことを取り戻すと、認知症の症状や精神疾患の症状が改善されたり、その人自身の人格を取り戻していくような場面に遭遇します。これは治療にともない、口腔ケアにより口腔内が清潔になり、食欲も増し、食事も楽しくなり、健全な栄養摂取により体力や免疫力が増進し、活力も生まれ、「歩く」「話す」「笑う」「唄う」ことのより精神衛生も向上していくからと言えるでしょう。

(文責 日本口腔インプラント学会 理事・指導医 医学博士 簗瀬 武史)

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