市民新報コラム

市民新報コラム

甘いものがしみる! (2004年5月)

患者さんからよくうかがうのは「普段は痛みもないし、冷たいものも温かいものもしみないのにチョコレートや飴を食べたときに歯が痛い!」という言葉です。今号はどうして痛いのか御説明します。

まず、歯の構造ですが、歯は「エナメル質」というほとんど無機質でできた硬い殻に覆われています。その内側に「象牙質」があり、さらに歯の内部には歯髄(歯の神経)や血管が入っている「歯髄腔」があります。
例えば手や足に目に見えない毛細血管があるように象牙質には「象牙細管」といわれる細い管が歯髄腔からエナメル質へ走っています。その管を通して歯の内部に栄養を送ったりしています。
この象牙細管が曲者です。生きている歯には重要なのですが、虫歯の細菌もこの管の内部に侵入し、虫歯も進行していきます。次に「浸透圧」(等張圧)が関係してきます。水分は濃い濃度の溶液と薄い濃度の溶液が接すると、同じ濃度にするために薄いほうから濃いほうへ水分の移動がおこります。
お口の中でも同じことが起きます。二次的に虫歯になったり、歯の充填物である金属やレジンがあわなくなり、接着剤であるセメントが溶け出したりしていると象牙質および象牙細管は自覚症状がなく、露出した状態になっています。そのため、甘いものを食べた時、砂糖がたっぶり溶けた唾液(濃い溶液)が象牙細管の表面に接すると象牙細管の中で水分の移動がおこります(ヒトの体液の濃さはポカリスエットと同じような薄い濃さなのです)。その水分の移動が感覚受容器を通してヒトは「痛み」として感じるのです。

ですから、甘いものがしみるときは、二次的な虫歯や充填物と歯の間に隙間がある場合が大半です。「たまに痛いだけだからいいや!」と思って放置していると、歯の神経を抜くような事態になります。早期に歯科医に原因の歯を特定してもらい、治療することが不可欠です。しみるのは気のせいではありません!早く治して、楽しく甘いものとお付き合いしてください。

 

(文責  医学博士  簗瀬武史)

2022年

2021年

2020年

謹賀新年with Corona

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

2004年

2003年

2002年

2001年

2000年

1999年

市民新報記事一覧にもどる

上にもどる