市民新報コラム

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健康保険に一言 (2006年6月)

4月に保険点数の改正があり、医療費抑制の影響のために、医科・歯科ともに保険点数は削減されました。我々、歯科医は、会得した学問と技術で日々診療を行い、また、歯科医学の進歩に伴い、修得のための努力もしていますから多くの歯科医にとって不本意な評価をされていると言わざるを得ません。

諸外国と比較すると歯科医療に対しての健康保険制度も大きく異なります。日本の健康保険制度は、「虫歯の治療」中心の考え方であり、「顎関節を含む口腔治療」の考え方にはなっていません。現在の歯科治療は、抜歯をはじめ、歯を保存するために歯周外科手術や歯根端切除術など多くの外科処置が日常的に行われていますが、医科と異なり、検査や処方できる薬も制約されています。
また、顎関節症の患者さんの多くは下顎位の変位や関節円板といわれるクッションのズレが原因ですが、健康保険内の治療は開閉口状態のレントゲン撮影と特定の機器での検査、および、一般的なマウスピースの製作のみです。一時的にお口が開かなくなった急性症状の改善には有効ですが、顎関節症の根本的な治療としては充分なものではありません。

根本的な治療を行うためには、健康保険外での検査、歯列矯正や正確に製作された仮歯による治療、被せ物の交換などが必要となり、患者さんの経済的な負担が増大した中で治療を行わざるを得ません。ドイツでは、歯の欠損したところに施術する口腔インプラント(人工歯根)療法も健康保険でおこなうこともできます。患者さんは大きな経済的負担を強いられることなく、残存歯を守り、天然歯とほぼ同じように咬める環境を手に入れることができます。歯の被せ物も諸外国であれば、選択の余地も多く、審美性・機能性に優れたものを保険内で選ぶこともできます。ただし、外国によっては健康保険料も高い場合もあります。

歯科医療への認識の転換と、支払う健康保険料が無駄なく、有効に利用されることも重要だと思っています。

 

(文責:(社)日本口腔インプラント学会 指導医 / 医学博士 簗瀬武史)

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