市民新報コラム

市民新報コラム

神経を残す(2011年7月)

「痛み」を感じてから歯科医院に飛び込む患者さんも多いかと思います。

何もしなくてもズキズキ痛むようになったり、コーヒーやお味噌汁を飲むとズキーンと脈をうつような持続的な痛みがでてしまった場合や肉眼的に明らかに虫歯が歯の神経までおよんでいる場合は、局所麻酔下で歯の神経を抜かなければなりません(麻酔抜髄)。
しかし、歯の神経を抜いてしますと、再度、虫歯になった場合に気づかない、長年の間に歯根が縦に割れてしまったり、歯を失う要因が生じます。そこで、虫歯が深い場合でも歯の神経が残る可能性がある場合は麻酔した後に丁寧に虫歯を除去する治療を行い、歯の神経の保存療法を行います。虫歯はう蝕原生菌が歯の内部に「虫歯菌の巣」を作っている状態ですから、取り残しがあると、歯髄炎を起こしてしまいます。そこで、う蝕検知液を使用し、虫歯を染色しながら除去したり、カリソルブという特殊な薬品で消毒しながら除去したりします。
また、レーザーを照射し、虫歯の水分を瞬間的に蒸発させ、虫歯とその周囲の象牙細管(歯の象牙質を走行する毛細血管のようなもの)の内部まで完全に滅菌します。その後に強アルカリ性の裏層剤を貼付して、温かい冷たい刺激から神経を守り、消毒し、第2象牙質の形成を促進させます。虫歯の直下に第2象牙質が形成されると、神経への刺激も少なくなり、長期的な神経の保存が可能になります。

このように歯科医はなるべく、「歯を生きている」状態で保存するための努力を行いますが、残念ながら神経を残すための治療は百発百中ではありません。深い虫歯は歯の神経まで及んでいなくても、象牙細管を伝わって、神経が感染していることがあるからです。このような場合、治療して1週間から1ヶ月以内に痛みを覚えることが大半です。自発痛が出た場合、神経を抜くこととなりますが、まずは神経を残す努力を行うことが第1選択であることはご理解ください。


(文責(社)日本口腔インプラント学会 指導医 神奈川歯科大学客員教授 医学博士 簗瀬武史)

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

2004年

2003年

2002年

2001年

2000年

1999年

市民新報記事一覧にもどる

上にもどる