市民新報コラム

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PRP療法 (2006年1月)

最近、歯科の世界では「PRP療法」という歯周組織再生療法が話題になっています。PRPとは濃縮された血小板を含む血漿であり、多血小板血漿と呼ばれています。PRPが細胞や血管の新生や細胞の分化を促進する物質を放出することにより創傷、治癒、再生を促進させます。

この技術を応用することにより骨量が少なくてインプラント(人工歯根)療法ができなかった患者さんにPRP療法を行い、骨を再生することにより、インプラント施術が可能になったり、歯周疾患で歯槽骨を失った患者さんの骨の再生、また、歯肉移植を行った場合の創傷の治癒などの効果があります。現在でも化学的に製造された骨の代用材やコラーゲン、歯肉などの人工材料はありましたが、PRPと併用することによりより一層の効果が期待できます。

また、自家骨・自家組織と患者さん御自身の血液から精製されたPRPを併用すれば、他人や動物などの生体材料を使う必要もなく、万が一の感染の恐れも全くなく、安全性も確立されます。具体的にはGBR法(骨造成法)、歯周外科手術、インプラント療法、歯肉移植術などの歯科小手術施術時に患者さんの血液を平均的には50mlほど静脈より採取し、その血液を1回目の遠心分離で血球と血漿に分離させ、その中から、血漿と血小板のみを取り出し、2回目の遠心分離にて高濃度の血小板(PRP)のみを抽出します。これに患者さん御自身の血清を混ぜることにより凝固反応が起きてPRPは活性化し始めます。血を採取するといっても献血の400ccと比較すれば何分の1の量ですし、患者さん御自身の体へのご負担は全くありません。

PRPをさらに研究することにより、なお一層有用性は増すと思われます。再生療法は、組織工学を応用した細胞培養などの高レベルな高コストな技術もあれば、このように簡易的な方法もあります。しかし、PRP療法は未だ、健康保険内診療でないため、保険外診療の適応となっています。

 

(文責 医学博士 東邦大学医学部客員講師 簗瀬武史)

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