市民新報コラム

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超高齢社会におけるインプラント治療 (2014年12月)

現在、日本における認知症患者数は約462万人、その前駆症状である軽度認知機能障害(MCI)が約400万人と推計されており、超高齢社会となりつつあります。私も歯科臨床に携わり30年、インプラント治療に携わり28年が経過しましたが、歯科臨床医の診療形態、追うべき責任は変化してきています。

インプラント黎明期を経て急速にインプラント治療は普及し、現在、国内ではなんと!年間35万本のインプラントが販売され、臨床使用されています。しかし日本においてインプラント受療者の今後の口腔ケア、リカバリー体制は完全ではなく、口腔インプラント医が真摯に取り組まねばならない課題です。インプラント受療者が加齢や認知症ほか合併症によりメンテナンスやリカバリーのために自院に通院不可能になったり、インプラントに関するリカバリーが経済的に不可能になるケースも散見します。また、介護施設等で特殊な治療であるインプラントに関する知識が看護関係者や介護職員に理解されていないために、十分なケアがなされないケースも見受けられます。
では、インプラント治療は超高齢社会にとって「不必要」であり、「存在悪」か?というとそうではありません。多くの研究で天然歯の喪失による咀嚼機能の低下は全身的健康を損ない、しいては運動機能ならびに認知機能が低下することは明らかにされています。その結果、軽度認知機能障害から認知症への移行が早まることも明らかです。厚生労働省は軽度認知機能障害の改善を図り、認知症への移行を遅らせることが重要であることを明示し、取り組み始めています。我々が実践するインプラント治療が咀嚼機能の回復に有用であることはこの数十年間の研究・臨床で明らかにされています。今後、早急に過去に施術されたインプラント受療者の口腔ケア体制の整備と超高齢社会の到来を踏まえヒトのエイジングステージを考慮したインプラント治療が実践されることが望ましいのです。

(文責:日本口腔インプラント学会 理事 医学博士 簗瀬武史)

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