市民新報コラム

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噛むことと認知症 その1 (2013年10月)

今月と来月にわたり、「噛むことと認知症」について読者の皆様にお伝えします。

江戸時代の医者である貝原益軒は『日本歳時記』に「人は歯をもって命とする故に、歯といふ文字をよわい(齢)ともよむ也」と書いています。食事の際に「よく噛んで食べなさい」といわれた経験は、誰にでも何度となくあると思います。齢(よわい)という漢字は「歯が命」と書くように、人にとって健康に生きていくためには、歯で食べものをよく噛むことが何より重要であるということです。

まず、噛むということは食べ物を粉砕するだけでなく、運動機能を向上させる、脳を活性化させる、虫歯や歯周病を防ぐ、細菌の働きを抑える、消化吸収を助ける、味覚を助ける、肥満や糖尿病の予防になる、活性酸素を消去させる、発がん物質の作用を弱めるなど全身において様々な効果があることがわかります。現在、日本における認知症患者は65歳以上70歳未満の有病率は1.5%、85歳では27%に達し、65歳以上の認知症患者はすでに240万を超えているという推計もあります。さらに団塊世代が65歳以上になる2015年には250万人、2020年には300万人を超すと推定されています。高齢社会の日本では認知症がますます重要な問題になることは明らかです。

東北大学が70歳以上の高齢者を対象に、「健常群」と「認知症の疑い」の2群に分け、認知機能と口腔状況や咀嚼機能、残存歯数との関連性についての調査を行った結果、 健常群は平均14.9本の歯が残っているのに対し、認知症の疑いのある人は9.4本と少なく、歯の数と認知症との関連が明らかになりました。ヒトの歯の数はもともと上顎、下顎あわせて32本あり、親不知が生えていない場合は28本になります。自分の歯で食べられるために必要な歯の数は32本といわれており、過去の調査では、どの年齢層でも、自分の歯が20本以上残っている人の咀嚼状況は良好であることがわかっています。

(文責 神奈川歯科大学客員教授 医学博士 簗瀬 武史)

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