市民新報コラム

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九都県市防災訓練 (2019年9月)

あまり、連ドラを観ないのですが、ここしばらく観ていたのが「監察医 朝顔」です。若干の脚色もありますが、解剖や教室の日常などかなりリアルに描かれており、久々に感動しました。
若い頃、法医学教室で研究をした私は、東日本大震災時に警察庁・日本法医学会の派遣で宮城県にて11日間、遺体安置所で従事しました。70体近くのご遺体のデンタルチャートの採取と20数体のご遺体の身元確認をしました。現在は法医学教室非常勤講師、埼玉県警察協力医、日本法歯科医学会評議員と法医学、法歯学との関わりを継続しています。事件性のある場合は精度の高いDNA判定による身元確認は有用ですが、時間やコストもかかります。大規模災害時において歯科所見による身元確認は、一刻も早くご遺体をご家族の元へお返しでき、より有用であると証明されています。

関東圏では例年、九都県市防災訓練が行われています。本年、埼玉県は和光市が会場となり、大規模な訓練が行われました。遺体安置所が設置されたのは和光南公民館でした。現場と同様にブルーシートが敷かれ、埼玉県歯科医師会からは11名の先生が参加され、朝霞署員、和光市役所職員の2名の方がご遺体役となり、デンタルチャートの採取(歯科所見の記録)、生前のカルテとデンタルチャートの照合の訓練を行いました。被災直後のご遺体ですと死後硬直のため、開口することが困難な場合もありますが、不測の事態への訓練が実際の現場で役に立つことは言うに及びません。
東日本大震災時には生存された方が避難後に関連死により多数お亡くなりになりました。その死因の一つに誤嚥性肺炎があります。避難所の不自由な暮らしの中でどうしても口腔ケアがおろそかになり、お口の細菌が肺に入り、体力も免疫力も低下している状態のため、肺炎を発症してしまいます。ぜひ、非常袋の中にモンダミンのようなすすぎうがいが不必要な洗口剤も入れて備えをしていただきたいと切望します。

(文責:埼玉県警察協力医会理事 医学博士 簗瀬武史)

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