市民新報コラム

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簡単な義務と大きな権利(2002年3月)

日常の診療で残念な事が時々あります。医療の世界ではインフォームド・コンセント(患者さんに説明の上での同意を得る)が重要視されていますが、患者さんによっては歯医者に通院する不快感や歯を病んでいる痛みなどもあり、あまり説明を聞いてくださらない方もいらっしゃいます。

一概に歯の治療といっても一口腔単位の大きな治療になればなるほど、健康保険内の治療でも様々診療方法がありますし、患者さんによってその後の快適感や予後も異なってきます。

できることなら、患者さんに「説明」を聞く義務をはたしていただければと思うこともあります。ご自分の大切な体の一部を治すわけですから。ただし、その義務を果たしてくだされば、十分なアドバイスの元で「診療方法を選択する」権利と「ご自分の希望通りの診療を受ける、そして納得できる」という2つの権利が手に入ります。

不快な思いや焦燥感があるかもしれませんが、後々、本やテレビで情報を得たときにこんな方法で治して欲しかったという思いやこんな診療方法があったなら…という後悔を避けることができます。

歯科医院での説明は何も保険外診療の話だけではありませんし、特に歯周病は現在痛みがなくとも慢性的に進行していき、自覚症状を感じたときには、かなり悪化していて抜歯を避けられない状況になっている場合もあります。歯周病の治療は何段階にも分かれていますし、痛みがなくても進行している場合は外科的手術を行わないと完治できません。特に痛みを伴っていない場合は十分にご理解していないと過剰診療を受けているような誤解が生じる危険性もあります。後悔をしないためにもちょっとがんばってお耳を貸してください。

この記事を書く直前に、私は市民新報社社長吉田武示様の御訃報に接し、大きな悲しみを覚えております。長年にわたり地域の活性化・情報開示にご努力されたご功績は大きなものがあります。心よりご冥福を申し上げます。合掌。


(文責 医学博士 簗瀬 武史)

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