市民新報コラム

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咬みづらい!(2004年7月)

ヒトは当たり前のように毎日、「咬んで」食事をとっていますが、「咬む」ことは顎関節、下顎骨の位置・形態、歯並び、歯の形態、筋肉の動きから成り立っている複雑な機能システムです。また、ヒトの歯は上顎の歯がまな板、下顎の歯が包丁の役目をして物を砕いていきます。その時、下顎の動きは、前方や側方にも運動し、うまく包丁とまな板の関係を活用します。

理想的な歯並びは、大臼歯が上顎と下顎の適正な咬み合わせの高さを維持してくれて、小臼歯や犬歯(糸切り歯)、前歯がスムーズな顎の動きをおこなうための誘導をしてくれる仕組みになっています。また、大臼歯や小臼歯の尖頭や溝、土手、その斜面の角度などの形は効率よく物を砕ける形になっています。上や下の歯列の平面も平らではなく、若干の湾曲がついており、顎を動かしたときに上と下の歯が異常なぶつかり方やひっかからないようになっています。舌運動や唾液の量も関与します。

しかし、全ての方が理想的な歯並びではありませんし、歯牙の喪失や、ブラキシズム(歯ぎしりや喰いしばり)による歯の磨耗・形態の変化、親知らずや歯周病に起因する歯牙の移動、歯科治療に起因する咬み合わせの変化なども原因で「咬みづらく」なってしまいます。顎関節は関節腔、下顎骨の下顎頭、クッションの役目をする関節円板で成り立っていますが、咬み合わせが変化すると、下顎頭や関節円板がずれてしまい、関節の痛み、頭痛、開閉口時の異常な音、筋肉の痛みなどが出現し、下顎の十分な運動ができなくなり、うまく咬めなくなってしまいます。

治療法は段階的に行うことが好ましいと私は思います。いきなり、理想的な咬みあわせを作ろうとすると一口腔単位の治療になりますから、患者さんがお考え以上の大掛かりな歯科治療になってしまいます。まずは、原因の特定を行い、患者さんにその原因を十分に理解していただき、患者さんが許容できる範囲の治療を進めていくことが重要です。

 

(文責 医学博士 簗瀬武史)

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