市民新報コラム

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誤嚥性(ごえんせい)肺炎予防について (2004年6月)

近年、「口腔ケア」は歯科界だけでなく、看護や介護の分野でも認知されてきました。また、多くの一般の市民の方々にも、高齢者の摂食やお口の管理が全身的な健康に寄与することを理解していただけるようになりました。このことは高齢者の呼吸器疾患とその予防の分野で大きな一歩となります。若年者やご高齢でも健康に生活している方は誰も口腔の大切さに気づかないものですが,いったん病気にかかり全身の抵抗力が低下し,また、歯ブラシなど口腔清掃ができない状況になると,呼吸器の入口である口腔は細菌だらけになり、非常に不潔な状態になってしまいます。お口は摂食・嚥下(えんげ)により体力を維持するために「食べる」、生きていくために「息をする」たいせつな器官です。

この機能が低下すると、時には生死にかかわることがあります。口腔ケアを研究している医師・歯科医が、ある老人病院で,亡くなった入院患者の基礎疾患と直接死因の調査をしたところ,死亡者には脳血管疾患・障害の基礎疾患があり,直接死因として肺炎および感染症が半数以上を占めることが示されました。

また、我が国では,肺炎で死亡する人の92%が65歳以上の老人といわれています。これまでの老人性肺炎の治療では,肺炎を起こしている菌の同定とその細菌に効果のある抗生物質の選択に重きが置かれてきました。しかし,いったん治癒した肺炎もすぐに再発し、予後不良となることが多く,抗生物質を長期投与した場合など,MRSAのような耐性菌が出現して治療は困難を極めることが少なくないといわれています。人は少しずつ老いていき、少しずつ病に体を蝕まれ、必ず「死」を迎えます。しかし、その最後まで人間らしく生きる権利があると思っています。その尊厳のために医療や介護に携わる人々、ご家族の方々は一生懸命努力をされています。「口腔ケア」は全てではありませんが、「お口を守る」こともその方法の一つに加えてみていただきたいと思っています。

 

(文責  医学博士  簗瀬武史)

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