市民新報コラム

市民新報コラム

抜けるまで待つ? (2004年2月)

通院されている患者さんからよく「主人の歯が全体的にボロボロなのですが、本人は抜けるまで待って、総入れ歯にすると言っていますが、その方がいいでしょうか?」と相談されることがあります。たぶん、御主人はお仕事もお忙しいのでしょうし、また以前歯科医療でいやな思いをされたか、御自分の「歯牙」の重要性にお気づきでないと私は思っております。

お仕事より歯の治療を優先して欲しいとはいくら歯医者でも言うことはできませんが、「歯牙」の重要性を理解していただきたいとは思っています。
動物にも「牙」はあります。厳しい自然界で暮らす彼らは、たとえライオンでも「牙」が抜ければそれは死を意味します。人間は歯科医・歯科技工士がいますから、入れ歯・ブリッジなどの代用品で食事をすることができます。また、多数におよび歯が抜け、お体の御不自由になられた御高齢の方はミキサー食などで栄養を摂ることができます。
しかし、食事をしたときに食べ物の硬さ・やわらかさは歯根の周りにある歯根膜から脳に伝えて感じますから、歯を失ってしまうと食べ物をおいしく感じる「歯ごたえ」は鈍くなってしまいます。
また動物にとって「口」「牙」は感情を表現する器官でもあります。例えば、恐怖を感じれば、犬は噛みつきます。母犬は子犬をやさしく舐めます。人間で人を噛むのはアメリカの有名なプロボクサーぐらいですが、感情・運動のコントロールには使っています。
例えば、悔しい思いをしたときには奥歯でぐっと噛みしめて悲しみや怒りを堪えます。また、人は日常生活でストレスを感じたときには就寝中、歯軋りやくいしばりを行い、そのストレスを発散させます。また、運動やお仕事のとき、力を入れるときはぐっと奥歯をくいしばります。

このような理由で「待たずに治療」をお勧めします。サメは歯を失っても何度でも顎から萌えてきますが、人の永久歯は一度だけですので大切です。皆様もお時間の調整をされたらいかがですか?

 

(文責 医学博士 簗瀬武史)

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

2004年

2003年

2002年

2001年

2000年

1999年

市民新報記事一覧にもどる

上にもどる