市民新報コラム

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妊婦と口腔衛生(2009年5月)

時として妊婦の方が歯が痛くて心配そうな顔でお見えになります。半数の方が虫歯の痛み、残りの方は智歯(親知らず)周囲炎や歯周病の急性症状です。意外にも妊娠中の栄養や病気についてはご存知ですが、口腔内管理についてはご存知ないので今回は口腔衛生について記述します。

妊娠中はホルモンのバランスが変化し、唾液が酸性になったり、また精神的ストレスで唾液の分泌量が少なくなったり、また「つわり」が原因でブラッシングができないので口腔内の環境は最悪になります。 当然、虫歯や妊娠性の歯肉炎や歯周病になりやすくなります。

いままで、あまり知られていなかったのですが、歯周病原菌に歯肉などの歯周組織が冒されるとサイトカインやプロスタグランジンといった物質が産生されますが、これらが子宮内膜に作用すると早産の原因になります。実際、人工流産薬にはプロスタグランジンが含まれています。アメリカの学会の発表では歯周病でない妊婦より約7倍早産になる危険性が高いそうです。

妊娠を告げられたら、歯科医で歯石の除去とブラッシング指導を受けることをお勧めします。もちろん、虫歯や歯周病は治療をしますが、局所麻酔を使ったとしてもごくわずかですし、抗生物質や鎮痛剤も種類を選べば問題はありません。レントゲンも被爆量はごくわずかですし、腹部を被う防護エプロンをすれば完璧です。ただ、お子さんに何か生じた時、歯科治療が原因では?などの誤解が生じる懸念を考えると、親知らずの抜歯など歯科医も慎重になります。

昔は子供さんにカルシウムを奪われるからだなどと云われてきましたが、現在ではその因果関係も解明されてきています。出産までの10ヶ月は長く、また出産直後は忙しく、歯科への通院もままならないと思います。まず、出産計画を立てたり、妊娠がわかったら、歯科医院で口腔内チェックをしてもらい、「母」になるための備えをしてください。それが、「お子さん」を守る第1歩です。


(文責 医学博士 簗瀬武史)

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