市民新報コラム

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インプラントは悪役? (2003年12月)

最近、雑誌やインターネットでも「歯牙漂白」「審美歯科」という言葉につづいて「インプラント」の話題に事欠きません。インプラント療法に対して歯科医の見解は様々です。未だ、「インプラントという術式」に対して否定的見解を持つ歯科医も存在します。

インプラント療法は歯を失ってしまった顎の骨の中に人工歯根を埋め込み、それに被せ物を行い、歯の代用とする治療方法です。この治療法ですと人工歯根を埋め込むことにより、ブリッジにする場合も健全な両側の歯を削らないですみます。多くの歯を失ってしまった場合でも人工歯根を埋め込むことにより、取り外しの入れ歯にしないですみます。
また、顎の骨が痩せていて入れ歯が合わない場合も人工歯根を利用して入れ歯のガタツキを防ぐことができます。なのに、どうして悪役になってしまうのでしょうか?

現在では歯科界でも認知され、多くの歯科大学にもインプラント診療科が設置されています。しかし、元来、インプラント療法を日本に紹介し実践したのは、先進的な歯科開業医が中心でした。そのために基礎実験等のデータ不足や現在とは異なり、その当時のインプラントは骨との結合も強固ではなかったため、予知性の高い予後ではありませんでした。そのために旧態然とした歯科医学の仕組み(白い巨塔ではありませんが)や大学人から否定されてしまい、近年まで歯科大学でも口腔インプラント学の授業は行われていませんでした。
その後、多くの臨床医・大学人が研究し、診療に取り入れるようになり患者さんに喜ばれています。しかしながら、未だ、安易にインプラントを施術し、医療過誤が生じたり、またモラルからかけ離れた診療料金を請求する歯科医もおり、患者さん側に否定的見解が生じる場合もあるようです。

最近、内視鏡手術も話題になっていますが、インプラントにおいて大切なことは、「術式への否定」ではなく、「施術する医師のモラルと確立された治療システム」であると思います。

 

(文責 医学博士 簗瀬 武史)

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