市民新報コラム

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親知らずについて(2002年6月)

患者さんがいやがったり、怖がられたりする診療行為に「親知らず(智歯・第3大臼歯)」の抜歯があります。 ヒトが類人猿であった頃は四足歩行をしていました。その後、二足歩行になるにつれ、ヒトの顔は平面化してきました。それに伴い、ヒトの顎の大きさ・形も変わってきて十分に親知らずが萌えるスペースが少なくなりました。親知らずまできれいに歯列に収まっている方もいらっしゃいますがまれです。歯冠が歯肉から少しだけ出ていたり、斜めや水平方向に親知らずが倒れて第2大臼歯に接して中途半端な状態になっていることが多く、このような親知らずは口腔内の健康を侵します。
 臨在している第2大臼歯との間が上手にブラッシングできませんから、歯周病や虫歯になってしまいます。親知らずだけならいいのですが、第2大臼歯も歯周病や虫歯になりやすくなってしまいます。また、親知らずの周囲の歯肉は清掃性も悪いため、智歯周囲炎を起こしやすくなります。軽度ですと膿をだすと2,3日で自然と治ってしまうのですが、重度になりますと開・閉口筋に感染・炎症をもたらし開口障害がでて3cmぐらいしかお口が開かなくなってしまいます。
一番問題なのは親知らずがかみ合わせに影響することです。親知らずが萌えるスペースがない場合、親知らずによって手前の第2小臼歯や第1・第2大臼歯が押し出されてしまいかみ合わせが高くなり、その結果、下顎の位置がずれて下顎前突になってしまったり、せっかく歯列矯正をされても親知らずを抜かずにそのままにしておくと歯が元の位置に戻ってしまう「後戻り」を起こしてしまいます。
親知らずの抜歯は切開・縫合や骨の削除が必要な小手術になる場合も多く、術後の痛みや2,3日間炎症により腫れもでます。ただ、抗生物質でコントロールすれば1週間以内には治癒します。百害あって一利なしの親知らずです。痛みの出る前に歯科医院で御自分の親知らずの確認をされたらいかがですか?

 

(文責 医学博士  簗瀬武史)

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